コンセプト

30年つづく個人雑誌の最新バージョン

『Gyahun(ぎゃふん)』の原点は、フリーランスのライター・編集者の米田政行が中学生時代に制作した肉筆回覧誌にあります。紙にペンで文字やイラストを書き、色鉛筆で誌面に彩色して仕上げました。

やがて、ワープロで文字をプリントアウトし台紙に貼って、コピーして製本するカタチに進化。さらにワープロの性能が向上すると、レイアウトもワープロで行なうようになりました。

大学を卒業し、プロのライターとして修行を始めると、本づくりにMacを導入。本格的に印刷・製本をほどこすZINE(リトルマガジン)『ぎゃふん』が誕生しました。同時に『ぎゃふん』をつくるプライベートブランドに「ぎゃふん工房」と命名。

その後も、プロのライター・編集者として身につけたノウハウをZINE制作に活かし、逆に『ぎゃふん』づくりで培った技術をプロとしての仕事にフィードバックしていきました。

創刊号の発行から約20年後。フリーランスとして独立した際に屋号を「Gyahun工房」としました。『ぎゃふん』は『Gyahun』と改名。

現在の『Gyahun』は、30年以上にわたりつくりつづけてきた個人雑誌の最新バージョンといえます。

年齢とともに趣味や嗜好が変わり、それにしたがって『Gyahun(ぎゃふん)』の見た目や内容も少しずつ変化していきました。

でも、ひとつだけ変わらないものがあります。それは「自分が楽しいと思う本をつくる」という編集方針。

この楽しさをぜひみなさんにおすそわけしたい。そんな想いから『Gyahun(ぎゃふん)』を制作しています。

少しでもご興味をお持ちになりましたら、ぜひお手にとっていただければと思います。

2024年2月
米田政行(Gyahun工房)

Gyahun工房サイト

『Gyahun(ぎゃふん)』を有料化した理由

『Gyahun(ぎゃふん)』は、2001年の創刊以来、ずっと無料でご提供してきましたが、2024年に有料化に踏み切りました。その理由を説明します。

近年、インターネットの状況は激変し、ウェブサイトはSEOが施された企業のものしか読まれなくなりました。その企業サイトさえも最近はSNSやAIの台頭によって苦境に立たされています。細かい分析は専門家にまかせるとして、個人が趣味で制作するZINEの読者をインターネットで集めることには限界を感じていました。

そもそも『Gyahun』で利益を得ることは露ほども考えておらず、年に数人でも興味を持ってくれる人に出逢えたらいいな、という考えで制作しておりました。しかし、最近はその数人との出逢いすら叶わなくなっています。

『Gyahun』は、私の情熱のおもむくまま好き勝手につくっているので、万人受けする内容ではありません。万人受けする——インターネットの検索に引っかかったり、SNSで受けたりするような内容にすれば、あるいは活路が見出せるのかもしれません。

でも、それはなにかちがう。抽象的な表現をすれば、ネット社会の“市場性”を持たないコンテンツにも価値があるのではないか、と思うのです。

ネット社会的な“市場性”を持たないコンテンツを読者に届けるにはどうしたらいいか。たどりついたのが「ネットではなくリアル書店に置く」という答えでした。

書店に置くためには、価格をつける必要があります。世のなかにモノを送り出すためにはお金がかかる。そんな資本主義の法則に本誌も抗うことはできませんでした。

本が好きで、街を探索していて、ふらっと書店に立ち寄り、ふと『Gyahun』を手にとって、「あ、これは自分が読むべきZINEだ」と感じてレジに持っていく。そんな出逢いを期待しました。もちろん、お店を訪れる人みんなが『Gyahun』に興味を持ってくれるわけではないでしょう。でも、「なんだこれ?」と手にとってくれる人、いや手にとらなくても「あれなんだ?」と目に留めてくれる人がひとりでもいるなら幸せではないか。そんなふうに考えています。

また、遠方のお住まいのかたにもお買い求めいただけるように、ネットショップも開店しました。

『Gyahun(ぎゃふん)』が無料だった理由

『Gyahun(ぎゃふん)』の創刊から20年以上、無料で配布していた理由を説明します。現在は有料化しているわけですが、記録のため当時の理念を書き残しておきます。

もともとは年賀状。だから無料

『Gyahun(ぎゃふん)』は、毎年1月1日に友人・知人へ送る“年賀状”としてつくりはじめました。

年賀状には、ふつう近況報告などを書きこんだりしますよね? 『Gyahun(ぎゃふん)』も、「最近はこんなことを考えています」「これからはこんなことをしていきます」といったことをお知らせする役割を果たしていました。

年賀状を送り付けてお金をとる人はいませんね。

だから、『Gyahun(ぎゃふん)』も無料なのです。

コンテンツの実験場。だから無料

こんなふうに考えてみてください。

こだわりのパンを地域の住民に提供している個人商店。あるとき試作品のパンをつくったとしましょう。お客さんはこれを食べてどう感じるだろう? 喜んでもらえるだろうか? そんなふうに思いながら、試作品を召し上がっていただくとします。

もちろん、味に自信はあるけれど、あくまで試作品。だから、お金はいただかない。

『Gyahun(ぎゃふん)』は、Gyahun工房がさまざまなコンテンツの可能性を探る場でもあります。だから、パン屋さんとおなじように、無料でご覧いただいているのです。

お金儲けからの解放。だから無料

お金儲けがいけない、と思っているわけではありません。一方で、お金はあくまでなにかの〈目的〉を実現するための〈手段〉であるべきだとも考えます。

『Gyahun(ぎゃふん)』は、つくることそのものが〈目的〉。リリースした時点で目的は達成されているのです。

また、『Gyahun(ぎゃふん)』では、〈お金〉そのものの意義やありかたを考察することもあります。その際、みずからが〈お金〉を得ていると、客観性が損なわれるかもしれない。

そんなふうに考えているから、無料なのです。

無料だからといって、もちろん価値が低いわけではありません。

自分の好きなようにつくっているけれど、趣味や嗜好がぴったり合い、おなじように気に入っていただける読者さんもきっといるはず。

そう信じて、これからも『Gyahun(ぎゃふん)』をつくりつづけていきます。